*2009.08.26 (Wed)... 瞳をすまして

★瞳をすまして★


瞳をすまして／杏野朝水

～あらすじ～
生まれつき耳の聞こえない牧野登和は、努力の末、健常者が通う大学に進学する。夏休み直前、モデルのバイトをやっている、派手な男・本多滋人と出会う。
耳が聞こえない登和に滋人はアレコレと親切に接する。いつしかお互い励ましあう仲になり、登和は滋人に恋をするようになる。
人気者で、恋愛方面がかなりルーズな滋人の噂や、滋人の元カノの嫌がらせなどに遭いつつ、それでも滋人を好きなことを辞められない登和は、気持ちを滋人に伝える。
すると、滋人も登和に実は一目惚れしてたと告白。
晴れて二人は恋人同士になるが、登和の兄が異常なまでに滋人を警戒し、二人を別れさせようとして・・・！？


ドラマ「愛していると言ってくれ」を思い出しました。

二人のコミュニケーションは手話とか、読唇とか、筆談、メール。
ケータイメッセージの見せあいっこ。
手のひらとか、相手の肌に文字を書く。

身を寄せ合って、くっついていないと出来ないコミュニケート手段ばかりなので、ずいぶん体温のある小説でした。

耳の聞こえないことでハンデがあるけど、頑張って普通の大学に行ってる自分は周囲に凄く迷惑かけてるんじゃないかと悩む登和。
でも、健気に頑張ってる登和の姿を見て、今までのチャランポランな生活を改めて、モデルの仕事も大学も本気で頑張ろうとする滋人。

お互いを大事に想い合い、傷つけないように、依存しすぎないようにと頑張ってことが全て空回ってすれ違うふたりが切なくて切なくて。

登和のお兄さんは、過去のトラウマから、派手でいい加減っぽく見える滋人を毛嫌いするんですが、
「大学とか、自分の目の届かないところで登和を見守る役って事なら別に良い。でも、認めたわけじゃないんだからねっ！」
という、素敵なツンデレぶりを発揮。

滋人は「認めてください」と言うより、「登和っていつもあんなに無防備なんですか！？俺気が気じゃないんですけど！」と、愚痴言って頼っちゃった方が得策と考えて兄に甘えると言う、何か表面上はいい感じなんだけど、裏で物凄い火花散ってる感じが笑えました。

しかも登和は耳が聞こえない分、二人が実は裏でけん制しあってる事なんて全然知らんのがまた可愛い。

滋人が本気になってる子というだけで興味持ってちょっかい出してくるセイという、滋人のモデル仲間がいるんですが、言動から行動から、絶対何かあるって勘付くのに、耳が聞こえない分どうしても情報量が少なくてホイホイついてっちゃう登和は、やっぱり警戒心が薄いと思う。
今までお兄さんが箱入りで育ててきたから余計に純真無垢と言うかなんと言うか・・・。

まあでも、登和と滋人はいつでもラブラブなので良かったねってことで！

BLCD 瞳をすまして

牧野登和＝福山潤
本多滋人＝中村悠一

耳の聞こえない登和視点で話が進んでいく小説の音盤化。

これ、どう演出するんだと凄く興味がありました。

声に出して言うセリフ、例えば、滋人と学校の友達とか、聴者同士の会話は普通なんです。
でも、登和に話しかける人の声は、筆談やメールだと、感情がそこまで表に出ないけど、でも事務的でもないくらいの温かみがある感じ。
手に文字を書いたり手話の表現は、その手の動きにあわせた速度でしゃべると言う感じ。
特に手話は、習熟度にあわせてスピードが違う。

「と・・・わ。おは、よう」が、慣れてくると「とわ、おはよう。きょうも・・・いい、てんき・・・だね」位の成長を見せるわけですわ。

登和の家族は皆得意だからスラスラしゃべってる感じなんですが、手話サークルの友達はちょっと遅いかな～って言うくらいのスピード。
滋人に至っては、ホントたどたどしい感じ。だんだん慣れてきたらスピードもそれなりに上がってくるけど、あんまり長い言葉は全てケータイメッセージに切り替わるから、そこでまたしゃべる速度ががらっと変わるし、声に乗せる感情の濃度も違うし、ホントに聞き応えのあるCDでした。

BLCDということを抜きにして、これはホントに役者さんの芝居をじっくり聞くCDだと思いました。

細かいSEのおかげで、手話なのか、ケータイなのか、筆談か手話か、手に取るように分かるつくりになっていました。
お話自体は淡々としているので、ダルイかな～と思ったのですが、全然そんな事無かったです。

そしてアタシはこのCDで改めてゆうきゃんの声の甘さにクラッとした・・・。